骨董の世界で「一度は手にしてみたい」と称される伝説の磁器、古九谷。
わずか50年ほどで忽然と姿を消した「廃窯(はいよう)の謎」を含め、その存在自体がミステリーに包まれています。
しかし、いざオークションや実家の蔵で出会ったとき、私たちの前に立ちはだかるのが「古九谷の偽物(贋作)」という大きな壁です。
今回は、知的好奇心を刺激する「古九谷の見分け方」の深淵へとご案内します。
なぜ「古九谷の偽物」はこれほど多いのか?
古九谷は、江戸時代初期に石川県の九谷村で焼かれたとされる、日本初の本格彩色磁器です。しかし、実は「本物の古九谷」として公的に認められている数は極めて少なく、そのほとんどが美術館に収蔵されています。
- 「再興九谷」という名の正当なオマージュ
江戸後期、古九谷の美しさを復活させようと、加賀藩によって「再興九谷(さいこうくたに)」が作られました。これらは「偽物」を作ろうとしたのではなく、純粋なリスペクトから生まれた「写し」です。しかし、これが時を経て「古九谷」として流通してしまうことが、真贋を複雑にしている原因の一つです。 - 「大聖寺九谷」と輸出用模造品
明治時代、西洋での日本ブームに合わせて大量に作られた「大聖寺九谷」の中にも、古九谷のデザインを模倣したものが多く存在します。
【鑑定の秘儀】本物だけが放つ「違和感」の正体
プロの鑑定士は、古九谷の真贋を判断する際、単に「綺麗かどうか」ではなく、以下の3つのポイントに全神経を集中させます。
「緑」の深さと「油膜」の輝き
古九谷の最大の特徴は、独自の「九谷五彩(緑・黄・紫・紺青・赤)」にあります。
- 本物の特徴
特に「緑色」の絵具が厚く盛り上がり、光を当てると表面に「虹色の油膜(貫入付近のラスター彩)」のような輝きが見えることがあります。これは数百年という歳月が生み出した化学反応であり、現代の顔料による偽物には出せないオーラです。 - 偽物の特徴
色が平坦で、どこかプラスチックのような質感があります。
磁肌(地肌)の「素朴さ」
- 本物の特徴
江戸時代の精製技術では、現代のように完璧に真っ白な磁器は作れませんでした。本物の古九谷の地肌は、わずかに青みがかっていたり、細かな不純物(黒い点)が混じっていたりします。 - 偽物の特徴
真っ白でツルツルとした完璧な地肌。これは近代の精製技術による証拠であり、逆に「新しさ」を露呈してしまいます。

高台(底面)の「汚れ」と「角福」
器をひっくり返したときに見える「高台」こそ、情報の宝庫です。
- 角福(かくふく)の銘
古九谷の裏によくある「福」の字を四角で囲った銘。本物は筆の勢いが鋭く、墨の色が陶土に深く沈んでいます。 - 偽物の特徴
意図的に「古い汚れ」を塗りつけたような跡(汚し加工)があったり、スタンプのように均一すぎる銘があったりします。

「写し」を「お宝」に変える知恵
「これは偽物だ」と分かった瞬間、ガッカリして放置してしまうのはもったいないことです。
- 「吉田屋」や「飯田屋」の価値
古九谷そのものではなくても、幕末に作られた「再興九谷」の優品であれば、それ自体に数十万円の価値がつくことが多々あります。 - 時代の景色を楽しむ
骨董の醍醐味は、本物か偽物かという白黒の判定だけでなく、その器が「いつ、誰が、何を模して作ったのか」という背景を読み解くことにあります。
もし「これは…!」と思う品に出会ったら
「古九谷 偽物」という言葉で検索している方の多くは、手元にある品の価値を信じたい、あるいは確かめたいと思っているはずです。
- 文献や図録との照らし合わせ
美術館の公式図録(国立美術館のアーカイブなど)にある名品と、絵付けの「筆致(ひっち)」を比べてみてください。巨匠の筆跡には、迷いのない力強さがあります。 - プロの鑑定眼を活用する
陶磁器の真贋判定は、写真だけでは限界があります。土の重さ、肌の冷たさ、叩いた時の音。これら五感を使った鑑定は、数多くの「本物」を見てきたプロにしかできません。

【まとめ】骨董は「眼」を育てる冒険である
古九谷の真贋を巡る旅は、日本の工芸美の頂点を探る冒険です。
偽物があるということは、それだけ「本物」が素晴らしく、人々に切望されてきた証拠でもあります。
もし、あなたのお手元に気になる九谷焼があるのなら、それは歴史の扉を開く招待状かもしれません。
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